水晶体は透明な組織であり、その透明な組織で光を透過し、眼底の網膜に光を集め、物体の像を結びます。目の老化が進行し、水晶体は透明性を保てなくなり、濁ってくると光が眼底に入る前に散乱されて、網膜に像を結ぶ働きが弱くなり、かすんで見えるようになります。この水晶体が濁ってくる病気を「白内障」と呼び、老化現象が原因となった白内障を「老人性白内障」と言います。
そのほか、糖尿病やアトピー性皮膚炎に伴う白内障や、外傷性の白内障があります。
あなたが白内障の疑いがあるかどうか、進行状況からチェックしてみましょう。以下の症状が該当する時は、白内障の可能性があります。医師に相談してみましょう。

【初期の症状】
・ 何となく目がかすんだり、疲れる
・ 本などを見ていて集中力がなくなる
・ 薄暗い場所では物や本が見にくい

【中等度の症状】
・ 目がかすんでうっとうしい気分だ
・ 曇りガラスを通して見ているよう
・ 運転中、対向車のライトがかなりまぶしく感じる
・ メガネの度を変えても視力が出ないと言われた

【進行した症状】
・ 良い目を隠すと、かなり見えない
・ 視力が低下し、細かい作業ができなくなった
・ 運転免許証の視力検査で、更新ができないと言われた
・ 人の顔がはっきり見えない

「手術をしないで、薬で白内障は治せませんか?」という相談を受けたことがありますが、答えは残念ながら「ノー」です。現在のところ、白内障を完治させる点眼薬や内服薬は開発されていません。(老人性白内障の治療には点眼薬が使用されていますが、これは白内障の進行にともなう視力の低下を先へ引き延ばすのが目的です。)白内障の根本的治療としては、やはり手術が必要になります。そこで当院では日帰り手術を行えることを可能にしました。現在、日本では、1年に約20万人の人が老人性白内障症の手術を受けています。

白内障手術内容
白内障の手術を一言で説明するなら"水晶体が濁った部分を取り出す"手術といえます。手術時間は15分程度。手術前の準備と、手術後のチェックなどの時間を含めても60分以内で終了します。
  1. まず点眼麻酔をします。
  2. メスで眼球を約3〜5mm程度切ります。その小さな切り口から、いま主流になっている『超音波乳化吸引法』という、超音波を利用して水晶体の濁った箇所を砕いてから吸い出す作業を行います。
  3. 水晶体を取り除いた後は、物がぼやけて見えます。そこで、水晶体があったところに小さな『眼内レンズ』(人工水晶体)を挿入して、視力を回復させます。
  • 現在では眼内レンズの安全性が評価され、白内障手術のほとんどが眼内レンズを移植する手術になりました。ちなみに、日本における白内障手術の9割以上が眼内レンズの手術です。眼内レンズは、患者さんに合わせて度を決め移植します。
  • 翌日から、ひどく激しい動きでなければ、車の運転や簡単な仕事など通常の日常生活を送ることはできます。ただし、洗顔、洗髪は医師の許可を得てから行ってください。

手術の進め方



健康保険が適用されます
1992年4月以降、白内障手術の眼内レンズの費用にも健康保険が適用されるようになりました。ですから、患者さんは自己負担の費用が軽減され、安心して白内障の手術を受けることができます。

手術を受ける時期はいつ?
現在は一定の基準といったものではなく、職業、生活スタイル、症状など人によって違うためさまざまです。例えば0.7の視力では、頻繁に運転する人は早めの手術が必要でしょうが、それほど視力を必要としないで生活する人は、急いで手術することはありません。だからといって長い期間、そのまま放置していると、緑内障やブドウ膜炎などを起こす心配があり、手術をしても視力回復が期待できなくなってしまいます。手術をする時期は患者さんが"日常生活に不自由を感じた時""手遅れにならないうち"が適切と言えるでしょう。

白内障手術は痛くないのですか?
「痛いのではないだろうか?」と不安になっている方もいるかもしれませんが、患者さんの精神安定が何よりも大切なのです。手術は、通常局所麻酔を行ってから始めますので、手術中の痛みは全くありません。手術中の緊張によって、血圧が高くなったり、息苦しくなったり、頭を動かしたりすると、逆にトラブルを引き起こす可能性がありますので、医師を信頼し、落ち着いて手術を受けましょう。

私は80歳になりますが、白内障の日帰り手術を受けることができますか?
当院では下記の条件がそろえば、日帰りの通院手術を実施しています。
<条件1>通院が可能である
日帰り手術では、患者さんが"通院できること"が重要なポイントです。住まいが病院近くにあり、体に不自由がなく、日常生活ができる方なら大丈夫です。
手術後の診察も通院で受けることになります。手術後の翌日から3日後、1週間後、2週間後、1ヵ月後の診察が必要となります。症状によっては短縮される場合もあります。その後もある程度の期間、定期検査が必要です。
<条件2>本人が希望する
手術をスムーズに進め、成功させるためには患者さん本人の意見を尊重することが大切です。患者さんの心理的・経済的問題などを含め、家族でよく話し合ってから医師に相談しましょう。
<条件3>重い病気がない
高齢になると何らかの病気をお持ちの方が多くなります。特に高血圧、不整脈、喘息などの病気は、白内障の手術を行う際や、手術後の管理において障害となる場合があるので注意が必要です。また、手術を受けることが精神的ストレスや緊張につながり、症状が急変する心配もあります。そこで手術前には、かかりつけの先生、専門病院などに行って全身の健康状態をチェックし、重い病気にかかっていないことを確認する必要があります。
<条件4>目に重い合併症がない
白内障以外に目の病気がある場合は、手術に長い時間を要したり、手術がとても困難になったりします。また、手術後の合併症・治療のために入院が必要なこともありますので、手術前にご相談ください。
<条件5>自己管理ができる
日帰り手術は、手術後の管理が患者さん自身や家族の責任で行われることが条件です。点眼や薬の服用が指示通り正しくできなければ、感染症になる危険があり、傷口が安定するまでは眼球の保護に気を使う必要もあります。入院による手術では、入院中の管理・治療は病院の責任で行われますが、日帰り手術では"自己管理"が必要です。

白内障手術は安全性が高いと聞きましたが、リスクは無いのですか?
白内障の手術は他の目の手術に比べて、安全性が格段に高くなっていますが、それでも成功率100%には達していません。患者さんの体の異常などによって予測しない反応や問題が起きるなど、ほんのわずかと言えどもトラブルの可能性が残っているのです。しかし、視力改善という利益がリスクを上回る以上、医師はトラブル防止に配慮して手術を行います。



[正常]
水晶体が透き通っているので、はっきりときれいに見えます。



[白内障]
水晶体が濁っているために、物がかすんで見えたりします。



[レンズ挿入後]
濁っている部分を除去し、レンズを挿入することで、視力は回復します。


平常の視覚

白内障の視覚